「ねえ越野、仙道って、性欲とかあるのかな?」
「なっ!?に言ってんのお前!?」
「だってさぁ前にお休みの日に遊びに行ったら、健全な意味でのお昼寝して終わったんだよね」
「それは…まぁ…仙道らしいっちゃ仙道らしいが…」
「私に興味ないのかな…」
「そんなことはないと思うけど…つーか、待て、その悩み解決したって言われた時がむしろ気まずいからやめろ」
「どうしたらいいと思う?興味ないのはちょっと切ないよね」
「俺の話聞いてるか?」
「性欲がないならないでいいんだけどさ、なんか今までにそういう話になったことないの?」
「いやまぁ人並みにはあると思うけど…ってだから俺の話聞いてる?友達の彼女とこんな話してる俺の身にもなれよ」
「仙道の好きなAVとかないの?私見て研究しようかな」
「マジでお前何言ってんの!?女子が軽率にAVとか言うなよ!?!?」
「うーん…」
「…て、いうか、なんだ、は仙道としたいわけ?」
「え、」
「いやだってそうだろ?これでいざ仙道とそういう雰囲気になったら断るとか最悪だろ」
「そっか…たしかに…」
「仙道に迫るなら、もちゃんと覚悟持てよな。たぶん大事にしてるだけだと思うけどな、俺は。」
「…うん、そう、だね…」


越野に釘を刺されて、「覚悟」の意味を考える。
今までのお付き合いではキスすらしたことのなかった私は、言うまでもなく未経験だ。キスが初めて、という話は仙道も知っているから、当然その先も初めて、という認識なんだろう。間違ってないし。
仙道に経験があるかどうか聞いたことはないけど、キスは初めてではなさそうだったな…。
ドキドキしてまともに顔を見れなかった私の頭を撫でて、いつもの余裕の微笑みが近づいてきたファーストキスは忘れられないし、忘れるつもりもない。

それ以来、2人で会える時間のどこかでは必ずキスをするようになった。別れ際のことが多いけれど、ふと顔が近づいた時に、当たり前のように仙道が唇を合わせていくこともある。その度にニコリと笑う仙道に、ぎゅっと胸が締め付けられて、幸せだなぁと感じる。
そうなると、もっと仙道に近づきたいと思うのは、自然な感情なんじゃないかと思う。
仙道は、そんな風には思ってないのかな。








「ほんとに、いいのか?」


困ったような、少し緊張しているような顔で仙道がベッドに座っている私の顔をのぞきこむ。
いいよ、と答えるのは何か違うような気がして、言い淀む。私が許可を与えるみたいな言い方は、すべきじゃないような。
でも、「したい」とストレートに言えるほど私は慣れてもいなくて、口の中でいろんな言葉がもごもごして何も出てこない。


「…無理すんなって」


優しく笑って、仙道が私の髪をくしゃくしゃと撫でた。
ちがう、違うのに。早く肯定的なこと言わなくちゃなのに。


「お茶のおかわり、いる?」


雰囲気を変えるように仙道が明るい声を出し、ベッドから立ちあがろうとする。


「なんかこの間母親が来た時のお菓子が…っ?」
「せんど、う」


仙道のベッドにしゃがみこんだまま必死に腕を伸ばして、仙道のシャツの裾を掴む。恥ずかしくて顔をあげられないけど、でも、言わなきゃ、


「仙道は、」
「うん?」
「わたしと、」
「うん」
「……その、…し、したく…ないの…?」
「!」


は、と仙道が息を呑むのがわかった。ちらりと目線だけ上にあげると、思った通り仙道が目を丸くしてこっちを見ている。
く、と唇を引き結んで、仙道が気まずそうに目を逸らす。
そっか、したくないんだ。


「…かえる」
「え、ちょ、!」


恥ずかしい。仙道を近くに感じたいって思っただけだったのに。好きすぎてどうしたらいいかわからなくて、好きの最大級の表現としてそんなことしか浮かばなかった自分が恥ずかしい。
仙道は全然、そんなこと考えてなかったみたいで、私ばっかり前のめりで、本当に恥ずかしい。
ショックというより羞恥心でまともに仙道の顔も見られない。


「待てって、」
「…っ、」


自分なりに最大限の素早さを発揮したつもりだったのに、荷物を手に取る前に、あっさり体ごと仙道の腕の中に絡め取られた。


「ごめん」
「…っ…!」


背中をさすられ、落ちてきた声のあまりの優しさに、みるみる眉根が寄ってしまう。仙道の胸に顔を埋めて、背中側のシャツの裾をつかむ。


「そんなこと言わせて、ごめん」


珍しく悔しさが滲む声に少しだけ顔を上げると、仙道が苦笑いをしながら涙を拭ってくれた。


「まさか、したくないのか、なんてさ…そんなこと…女の子に言わせるなんて、申し訳ない」


また仙道が私を抱き寄せて、今度はぎゅっと抱きしめられる。


「したくないわけ、ないだろ」


初めて聞く、熱のこもった仙道の声。腕の強さも強くなって、涙がとまる代わりに鼓動が早くなる。


「…ごめ、ん」
「なんでが謝るんだよ」
「へんなこと、言って」
「何にも変じゃない」


力がゆるんだところで、仙道の顔を見上げる。真剣な表情の仙道に、またどきりと胸が高鳴る。どうしてだろ、いつもよりもなんだかカッコよく見える。


「なん、か」
「ん?」
「いいよ、とか言うのは違うかな、って」
「え?」
「仙道に頼まれて、私が許可を出す、みたいなのじゃなく、て、」
「…」
「その…、えっと…、だから、」
「わかった」


しどろもどろになっていく私をもう一度ガバリと抱きしめて、仙道が私の後頭部を優しく包み髪の毛をくしゃりと乱す。



「うん」
「俺…すげーのこと好きだよ」
「…うん」
「したいか、したくないかって言ったら」
「…う、ん」
「そんなの付き合う前からしてぇと思ってるよ」
「…!?」
「…引いた?」
「っ、うう、ん」
「好きなんだからあたりまえだろ」


再び仙道の腕の力がゆるみ、今度は肩に手を添えそっと体が離される。
困ったような顔をした仙道を見ていたら、どうしようもなく好きな気持ちが溢れて、無意識に顔を僅かに右に傾けてしまった。顎が軽く上を向く。
一瞬だけ目を見張ったあと、仙道の顔も少しだけ左に傾いて、優しく唇をあわせてくれる。


「…な、に、いまの」
「…え、」


数秒唇を合わせた後、ゆっくりと離れたかと思ったら、仙道が珍しく耳を赤くしてこっちを軽くにらみつけている。まさか…照れてる?


「あんなキス待ち顔はズルい」
「…そんなつもりは…っ」


ちょっと怒ったような、拗ねたような顔をした仙道がもう一度近づいてくる。
あ、と思った時には唇が重ねられていて、そしてすぐに、いつもの優しく触れるキスではなさそうな気配を感じる。


「…っ、」


角度を変えて唇を食むように捕えられて、思わず吐息を漏らしたその隙間に、仙道の舌がすかさずねじこまれた。初めての、深い口付け。


「…ふ、…っぁ、」
「…


一瞬離れたと思ったら、短く名前を呼ばれて、またすぐに口を塞がれた。
背中を支えられながら、ゆっくりと仙道のベッドに押し倒される。


「…ん、…っ…ふぁ…」
、」


ゆっくりと唇が解放されて、はぁはぁと息が上がる。思ったように呼吸ができていなかったらしい。


はさ、」
「ふぇ?」
「対等な気持ちでしたいと思ってくれてるってことなんだよな?」
「たいとう…」
「俺がしたいから、がいいよって言うんじゃなくて」
「うん」
「俺がとしたい気持ちを大事にしてくれて、その上で、も、俺としたいと思ってくれてるから、しようって」
「…っ、う、うん」


そんなにストレートに「したい」って連呼されると、いくらこんな雰囲気でも恥ずかしい。


「わ!?」
「ありがと」


突然仙道の体が私の体の上に落ちてきて、抱きしめられる。全体重ではないんだろうけど、それなりに、重い。


「ちょ、せんど、おも…!!」
「はは、ごめん」


また仙道が肘で上半身を支えながら、私の上に多分四つん這いみたいな姿勢をとる。


がそう言ってくれるのは嬉しいし、すげーありがたい」
「…ん」
「でもさ、やっぱり女の子側の負担が強いからさ」
「…うん」
「男側としては、『いいの?』って聞きたくなっちゃうんだよな」
「…なる、ほど」
「……ほんとに、いい?」
「……ん」


こくりと小さく頷くと、仙道が見たことのない優しい顔をして、微笑む。


「…大事に、する」
「…お願い、します」


***


「…んっ、…はぁ…っ、んぁ…っ、」


仙道に触れられるたび、恥ずかしくてたまらない声が吐息とともに漏れていく。
口を塞いでいたはずの手は、いつの間にか反射で顔の横に投げ出され、右手には仙道の左手が絡められている。


…かわいい」
「やっ…、ぁ、」


ひとしきり上半身を攻められて、はぁはぁと肩で息をするしかない。スカートはいつの間にか脱がされていて、残されたショーツのクロッチ部分を、仙道の中指がゆっくりとなぞる。


「…んっ…!」
「いい感じ、だな」
「ぁ、っ…」


腰ゴムの部分から仙道の指がそろそろと入って、湿ったそこに埋め込まれる。


「お、濡れてる」
「や…っ、だぁ!」


ぶんぶんと頭を振る私を尻目に、仙道がそっと指を動かした。そこはくちゅり、と控えめだけどいやらしい音をたてて、私の羞恥心を煽る。
中に指が入っているわけではなくて、その手前というか、上の方の敏感なところをやわやわと仙道が撫でているらしい。
触れるたびにピクピクと身体が震えて、小さく喘ぐ声がとまらない。


「っ、…あ、…んっ、やっ…、」
、どんな感じ?」
「どん…っ、?…そん、な、わかんな、い、」
「痛くない?」
「んっ、いたくは、…ない…っ」


長い指で器用にそこをさすり、私を高めていく。
ぞわぞわと腰がくすぐったくなって、無意識に足をピンと張ってしまう。これ、やばいやつだ。


「あっ、あっ、やだっ、せん、どっ…!」
「いいよ、」
「やっ、はぁっ、だめ、っ、あっ、あ、あぁ、え、うそ、やっ、んっ、ん〜〜〜〜〜っ!!」


腰がガクガクと跳ねて、波がゆっくり引くのにあわせて、ピンと張った足が緩んでいく。
荒い息を繰り返す私を少し心配そうな顔をした仙道が覗き込む。


「大丈夫か?」
「…ん…」


ある意味大丈夫ではなかったけれど、それは私の羞恥心の話で、身体的には痛くもないし、むしろその逆。
体力を消耗してしまったのか、うまく開かない目で仙道を見つめる。


「指、いれるな」
「…ん、」


今度は中に仙道の指がゆっくりと侵入してきて、達したばかりの私は思わずヒクリと締め付けてしまう。


「あー、やべぇ」
「…ん、なに、?」
「我慢できるかな」
「がまん?」


困ったような顔で笑う仙道の首に、ぼんやりした頭でゆるりと腕を回しながら、私はきょとん、と小首をかしげる。
今日、しないのかな?我慢なんてせずに、最後までしてほしい、のに?


「がまんなんて、しなくていいのに、?」
「…っ、!」


一瞬目を見張った仙道が、ななめ上を見上げてふーと息を吐く。
そしてまた顔をこっちに向けて、さっきよりもっと困った顔をして笑いながら、ゆっくりと指を動かし始めた。


「あんまり煽んないでくれる?マジでやばい」
「んっ…!!」
「ちゃんと解さなきゃ、て思うのに、締め付けヤバいし」
「あっ、んぁ、っ、」
「優しくしたい、のに」
「んっ、…はぁっ、…あ、あぁ…んっ!」
「かわいすぎるな、本当…」
「…!?…ひっ、ぁっ、やぁ…っ!!」


ゆっくり中を探るように動いていた指が、くっと曲げられた瞬間、腰がビクリと跳ねた。


「あっ、やっ、そこ…っ、!」
「ここね」
「だ、め…っ、へん、っ、せんど、…っ!」
「トイレ行きたくなる?」
「んっ、そ、う…っ…や…ぁあ、!」


きゅうっと中を締め付けているのか、仙道の指の動きをはっきりと感じてしまって、その動きのいやらしさに顔を覆いたくなる。というか、無意識に腕に力が入って、仙道の首にすがりついてしまう。


「ぁっ、ん、はぅ…っ、せん、…っ!」
「…大丈夫」

さっきの場所を指でとんとん、とリズミカルに刺激されて、ビリビリとした刺激がとまらない。大丈夫って言われても、何かが弾けそうでこわい。


「こっちも触らないと厳しいかな」
「…っぁあ!?」


中に指を埋め込まれたまま、外の突起を刺激され、がくがくと腰がはねる。
もはや言葉も出ず、凄まじい快感が背中を駆け抜けた。


「さすがにいきなり中はイけないか」
「…ぁうっ、」


仙道の指の動きがゆっくりと止まり、私はしばらく呼吸を忘れていたように、はぁはぁと肩で息をする。下半身にはほとんど力が入らず、ぐったりと体を投げ出してしまう。



「ん、」


一瞬ベッドから降りた仙道が、ベッドの足側に置いてあるチェストから何かを取り出し、ピリッと破った。…あ、ゴム、か。


「そんなガン見しなくても、ちゃんとつけるよ」
「なっ…ちが…!」


恥ずかしくて直視できず、左側の壁に視線を注ぐ。
ベッドのスプリングがはねて、仙道が私の上に覆い被さってきた。
いつもの優しい微笑みだ。


、こっち向いて」
「…ん…」


仙道の顔が近づいてきて、唇を食まれるようにキスをされる。激しく犯すようなキスじゃないけれど、角度を変えて深く口付けられて、だんだん頭がぼうっとしてくる。


「入れるよ」
「…うん」


もう一度確かめるように指を軽く出し入れして、ぐっと足を開かれた。
恥ずかしいけれど、でも、嬉しい気持ちの方が強い。
仙道と、ひとつになれるんだ。


「…痛い、と思うけど」
「ん、いい、よ」


数回上下に往復してから入り口にあてがわれた仙道自身は、月並みだけど指なんか比べ物にならないほどの質量で、ぐちゃぐちゃに濡れていたはずの私がその侵入を全力で拒んでいる。


「…っ、、」
「…ん…っ、せん、ど…っ」
「ほら、つかまれ…、」
「んっ…」


腰が進められるにつれて、どんどんと痛みが強くなってくる。
私が痛みのあまり沈黙するのに反比例するように、仙道の息は少しずつ荒くなってきて、もしかして気持ちよくないのかもしれない、と不安がよぎる。


「せん、ど…」
「…ん?」
「よくない…?」
「え?」


ぽかん、と口を半開きにして仙道が静止した。
汗がひとすじ、こめかみをつたう。


「ごめ、なん…か、その、っ、入らない、から、よくない、のかなって」
「…はは、そんなわけ、ねーじゃん」


その逆っつーか、と仙道が今日一番困ったように笑う。
がっちりした二の腕で汗をぬぐい、ふー、と大きく息をつく。


「気抜いたらすぐイっちゃいそう」
「イっ…!?」
、人の心配するくらい余裕あんの?」
「え、あ…っ!」


仙道が突然私の胸に手を添え、その感触を楽しむように揉みしだきはじめた。
頂も口に含まれ、舌が這わされる。


「んっ…ぁっ…やぁ、っ」
「ごめん、一気にいく」
「へ、!?…な、あっ、え、あぁ、あっ…!!」


ちゅっと胸を吸われたと思ったら、仙道が見たことない真剣な顔をして、一気に腰をすすめた。めりっと音でもしたんじゃないかと思うほどの衝撃を、私はただただ仙道の首から肩にしがみついて、なんとかやり過ごす。


「あっ、せん、ど、っ」
「うん、
「んっ、はぁ、っ、」
「入ったよ」
「ん…せん、どう…っ」
、好きだよ」
「…す、き…っ」


仙道もぎゅっと抱きしめ返してくれて、二人の体温がひとつに溶け合うような錯覚を覚える。
体の大きい仙道が私に覆い被さると、私はすっぽり隠れてしまう感じがして、まるで仙道の中に取り込まれちゃったみたい。
中にいるのは仙道なのに、変なの。…そうだ、私の中に、仙道がいるんだ。


「…っ!!…
「っはぁ、な、に…?」
「…なんか、やらしいこと考えた?」
「へ?」
「なんか、締まったんだけど」
「っ!?」


まだジンジンと下半身には痛みが残っていたけど、ゆっくりと仙道の腰が動き始めた。痛む範囲がそれにあわせて少しずつ移動し、嫌でも中にいる仙道の存在をまざまざと感じる。


「あっ、はぁっ、んっ…ぁっ、せん、ど…っ」
「っ、、大丈夫、か?」
「んっ、だい、じょぶ…っ…!」


もはや何をもって大丈夫と言えるのかわからなかったけど、ひとつになれたことの嬉しさは本当だし、仙道が優しくしてくれているのがひしひしと伝わってきて、少しずつ擦れるような痛みが引いているような感覚があった。


「だいぶ、馴染んできたか…」
「は、ぁっ、せんど、う…」
「ど、した?」
「だいじょぶ、だから、」


だから、好きに動いて、と呟くと、仙道がピタリと動きをとめて、真上を見上げた後に私の首筋に顔をうずめて大きく息を吐いた。
えっ、なんか、気に障ったかな…


「そういうこと言うなって…」
「え、なん…」
「大変なことになるだろ…」


顔を上げてふー、と息をつくと、はは、といつもの笑顔を浮かべて、耳元にキスをくれる。


「慣れてきた?」
「…ん、たぶん」
「じゃぁ、少しずつ動くな」
「…うん、…っ、あっ、」


背中に腕を回されて密着したと思ったら、仙道の腰がさっきよりも大きく、はやく動き始めた。痛みが少しずつ薄まって、代わりに経験したことのない快感の割合が増えてゆく。


「んっ…あっ…、せん、ど…っ、なん、か…っぁあっ」
「気持ちよくなってきた?」
「あっ、ふぁっ、だ、め…っ、」
「大丈夫だから」


激しくはないけど一定のリズムで中が擦られてゆく。
キスをされたり、胸をいじられたりしているうちに何がなんだかわからなくなって、私はただ口をあけてひたすら酸素を取り込み、喘ぐしかできなくなる。


「あっ、んぁっ、はぁ…っ、あっ、も…っ、…!」
「…く、っ、…!」
「んっ、ふぁっ、あっ、せん、ど…っ!」
「〜〜〜〜〜〜〜!!」


それまでに比べたら深めに仙道が腰を打ちつけ、小刻みに体を震わす。
ふーーー、と息を吐いて、仙道がゆっくりと私の中から抜け出ていった。
私はと言えば、呼吸ができていることが不思議なくらい体のどこにも力が入らない。後処理をしているらしい仙道を寝たままぼーっと眺めていると、目が合った。


「大丈夫か?」
「…うん」
「ほんとに?」
「うん、多分」


下着を身につけ、ゴミをゴミ箱に投げ入れて、仙道が再びベッドに倒れ込みながら私を抱きしめた。


「あんまり可愛いことばっかり言うなって」
「なんのはなし?」
「エッチしてる時。マジでやばかった」
「やばいって?」
「…我慢できなくなりそーだったってこと」


だから我慢しなくていいのに、と思ったけど、それを言ったらいけないような気がして、口をつぐむ。そんな私の頬をむにっとつまんで、仙道が笑う。


「我慢しなくていいのにって顔してる」
「え!?」
「…もう少しが慣れたらそうさせてもらうから」
「…っ!?」


我慢しなくていいのにって思ったことも、仙道の好きなように動いて欲しいと思ったのも本当だけど、もしかして私はとんでもないことを口走っていたのかな…?
にやりと笑った仙道の顔を見ながらドキドキする心臓を必死に落ち着ける。
…私がそのことに気づくのは、もうしばらく先の話。











my first one