となりのクラスの男の子に告白された。
そのことを、お昼ご飯を食べながら、さりげなさを装ってノブに話したら、パンにかぶりついてたノブの動きが、面白いくらいにぴたってとまった。
「そんな驚かなくてもいいじゃん。」
「いや驚くだろ!!お前なんて答えたんだよ!?」
「いやまぁ付き合ってる人いるからって。」
「で?」
「え?『で?』って?」
「そしたら相手は?」
「んー・・・何だっけ、あぁ、『バスケ部の人だよね』って。」
瞬き一つせずに、真剣な顔で見つめられるとこっちまで緊張してしまう。
そんな、まぁそりゃぁ流せるような話じゃないかもしれないけど、そこまで思いつめた顔する必要あるだろうか。
「とにかく、そのバスケ部の人と付き合ってるから、お付き合いはできませんごめんなさい、って言ったよ。」
「・・・・・誰だよ」
「え?何が?」
「に告ったやつだよ!!」
「・・・えー・・・」
何となく嫌な予感がして、眉をひそめる。
「んだよ、言いたくないのか?」
「だってノブ、何かしに行くでしょ。」
「何もしねぇよ。」
「じゃぁなんで、」
「てかお前なんで告られてんだよ。」
「へ?」
「何で他の男が『告ったら俺うまくいくんじゃね』みたいに思うようなことがあんだよ! お前なんか勘違いさせるようなことしてたんじゃねぇの?」
「な・・・」
他の男の子に告白されただけなのに、ノブからのひどい言われように私は絶句した。
理不尽である。
「何その言い方!!私がそんなに可愛くなくてモテないって言いたいわけ!?」
「んな事言ってねぇだろ!!」
「だいたい別に告白して来た人が『いけんじゃね』って思ってたかどうかなんてわかんないでしょ!」
「けど普通そう思わねぇと告んねぇだろ!?」
「そんなこと知らないよ!!
ノブが食べ終わった焼きそばパンの袋をぐしゃっと握った。
怒ってるような、しまったと思ってるような、微妙な情けない顔で私を見つめる。
確かに私が他の人から告白されるなんて初めてで、ちょっとノブも動揺してるのかもしれない。
何となく腑に落ちないというか、ひっかかる話ではあるが。
「・・・アドレスとか教えてないし、正直ほとんどしゃべった事なかったよ。」
「は?」
「委員会が一緒だったことあって、廊下で会えばたまに挨拶するくらいの関係。顔見知りって感じ?」
「・・・」
「なんかね、来月からしばらく留学に行くんだって。」
「・・・・」
「それで、気持ちだけ知ってほしかったからって言いに来てくれたらしいの。」
「・・・・・」
「私とノブが付き合ってることも知ってるぽかった、てか、うちの学年で知らない人なんていないと思うし。」
「お、おう・・・」
「何でそんな怒んの?浮気未遂したみたいな言い方されてちょっと不愉快。」
「・・・・・・」
ノブがますます情けない表情になる。
「・・・わりぃ。」
「うん。」
「俺な、のことすげぇ可愛いと思ってる。」
「・・・?」
「付き合う前は、全然俺の事なんて好きな風には見えなかったのに、付き合ってから俺結構好かれてんなって思う事増えたんだ。・・・自惚れとかかもしんねーけど。」
「・・・」
「そういうとこ、ほんと可愛くて、好きなんだよ。」
「・・・うん。」
「で、それを他の男も知ってんのかって思ったら、ついカッとしたっていうか・・・」
「・・・・バカ?」
「なっ・・・!!!うるせぇ!!」
ごみの袋を乱暴につかんでノブが立ちあがる。
あわせて私もお弁当袋を持って立つ。
「あと、何かうろたえた。」
「うろたえた?」
「付き合い始めた頃、よくがさ、ノブにはファンの子がいっぱいいて、不安だって言ってたろ?」
「・・・まぁ、ね。」
「俺正直その感覚がわかんなかったんだよ。」
「・・・・うん。(まぁ私にファンの人はいないからね)」
「こんなに俺のこと好きなのに、伝わってねーのかなーってむしろ不思議だった。」
「・・・。」
「でもさ、が言ってたことちょっとわかったよ。」
少しだけ苦しそうな顔でノブが私を見て、なんとなく気まずくて視線を逸らす。
すると、急に腕を強く引っ張られた。
バランスを崩した私の肩を、ノブが抱きすくめる。
「え、ちょ、ノブここ学校・・・!」
「俺も、と付き合えてる保障とかなくて、紙一重だったんだよな」
「・・・紙一重・・・」
「あー、ちゃんと大事にしなきゃな。」
「ノブ・・・・」
「・・・・ごめんな。変な言い方して。」
「・・・うん。」
「で?」
「え?」
「誰なんだよ?」
「何でまだ気にしてんの!?」
「気になるからだよ!!」
「あ、彼もう留学行っちゃったらしいよ。」
「はぁ!?」
あえか
意味。儚いさま。