、なんか姿勢変だけどどうしたの?」
「あー、わかる?なんか腰痛くて」

昼休み。弁当は早弁してしまったので、購買でパンを買って廊下を歩いていたら、と彩子の声だ。


「いや、昨日久しぶりに顔出してさ、色々してもらったんだよね」


彩子の言ったことはよく聞き取れず、の声だけが聞こえてきた。
色々してもらった?何をだ?


「あら」
「そしたら多分初めての人でさー」
「あー、あんまり?」
「うーん、なんか相性悪かったっぽいなぁ」


初めて?相性??なんの話だ?


「下手だったの?」
「下手っていうか・・・触り方とか動き方とかがあんまり私とは合わないっていうか・・・」
「気持ち良くなかったの?」
「よくなかったー!全然!!」

触り方・・・動き・・・
ほんとだったら気持ちいいこと・・だと・・・?まさか・・・!?


「それは残念ねぇ」
「なんか一回奥に入ったみたいでさぁ、そこが結構ずーっと痛いんだよね」
「あーたまにあるわね」


・・・奥!?!?おい、奥に入るってなんだよ!?
お前のどこの奥に何を入れるっつーんだよ!?
つか、あの時の話だとしたら、いっつも割と奥まで入ってるけど、もしかして痛かったのか・・・?いや待て、まだそうと決まったわけじゃねぇ・・・


「結構激しく動かすタイプだったけど、ああいうの好きな人もいるんかな」
「そりゃいるんじゃないの。音が鳴るくらいじゃないと気が済まないっていう人もいるもの」
「私はもうちょっと穏やかな方がいいなぁ。ゆっくり上から体重かけてほしいっていうか」


体重ってことは、の上に乗ってすること決定じゃねぇか・・・まじかよ・・・・・
んで、激しく動かされたのか・・・?
もしかして、俺とする時も激しすぎるとか思ってんのか・・・?
途中までは様子とか見ながらしてるつもりなんだけど、いつも最後は夢中になりすぎちまうからな・・・・
つーか彩子、音が鳴るくらいってなんだよ。なんの音なんだよ。


「前は結構気持ちよかったって言ってなかった?」
「前の人は最高だった!強さも動きも!すっごい気持ちよくて、終わった後すぐにはベッドから動けなかったもん」
「いなくなっちゃったの?」
「最近見ないなぁ・・・忙しいんじゃないかなぁ」


前の人!?俺の前の彼氏って話じゃねぇよな・・・
前の浮気相手ってことかよ!?おいおいおいいい!!
てかベッドから動けない・・・・・・!?
まぁ確かにぐったりしてることはあるけどよ・・・・・・
俺以外の男にも、終わった後のあの顔見せてんのか・・・?



「でも、戻ってくるまで待とうかな。いやほんと、浮気はするもんじゃないね」
「そのセリフだけ三井先輩が聞いたらビックリするわよ」
「うわ、確かに!今のだけ聞いたら怒りそう!」



俺が聞いたら怒るってことは、やっぱりそういうことかよ。
色々考えるより前に、体が動いた。




「え、ちょ、うわ!三井先輩!?!?」
「あら先輩、いつからそこに?」



後ろから、の手首をつかむ。
驚いた顔で俺を見上げるは、やっぱりかわいい。
クッソ、どこのどいつに、何を入れさせたっつーんだよ。



「お前のどこの奥に誰の何を入れたんだよ」
「へ?」
「気持ち良すぎて動けないってなんだよ。俺とするの不満か?」
「え、いや、ちが!」
「いっつも最後いくって言うの、あれ嘘かよ」
「わーっ!?!?せ、先輩、こんなところで何言い出すんですか!?!?」


あわてて手を振り解こうとするの手首を、ガッチリと掴んで離さない。むしろ、両手首をつかんで拘束する。


「や、ちょ、先輩離して・・・!」
「ダメだ離さねぇ」
「もしかして最初から聞いてた・・・?」
「どういうことか説明しろ」


そのとき、彩子が我慢できないというように吹き出した。


「彩子テメェ何笑ってんだ!」
「違うの先輩、整体の話してたの!」
「整体?」
「昨日腰が痛くて整体に行って、そこの担当の人が変わっちゃってイマイチだったっていう話!」

整体・・・
触り方・・・動き・・・気持ちよくなる・・・


「奥に入った、てのは?」
「なんかツボ?っていうの?そこをグッと強く奥に押された感じになって、ちょっと痛かった」
「音が鳴るくらいってのは?」
「骨の音」


なるほど。
手から力が抜けて、が解放された手首をさすっている。


「浮気とか言うからビビったじゃねーか!!」
「ご、ごめん!まさかそこにいるとは思わなくて! てか、最初に整体に行ったっていう話してたのに、そこは聞いてなかったんですか」


謝りつつも、の顔は半笑いだし、彩子に至っては笑いを隠そうともしていない。
早々に教室に退散することにして、階段に足をかける。


「じゃあな。、今日は練習見に来んだろ」
「あ、うん!」


2、3段上がったところで、下からシャツを引っ張られた。




「三井先輩」
「!?」
「好きなのも、したいと思うのも、先輩だけだからね 」


俺にだけ聞こえる小さな声でそう言うと、階段を駆け下りて行く。
の声が残る耳が熱い。・・・今度俺んち来る時は、覚悟しとけよ。










そばだてた耳が震えてる