だめだ。全然寝付けない。
私は何回目かの寝返りをして、小さく息を吐いた。もうベッドに入って1時間は経っている。その時、隣の部屋から物音がして、扉の隙間から漏れていた電気が消えた。
やばい、洋平ももう寝るんだ。私もちゃんと寝なきゃ。


目を閉じて、規則正しい寝息をたてて寝たふりをする。
寝たふりって、自分が寝てる時のことよくわかんないからこれで合ってるのかわかんなくなるけど、とりあえず寝てるように思わせなきゃ。
洋平の体が私の横にすべりこんできて、体温とか匂いとかを否でも感じる。
目を閉じてても、洋平がこっちを向いているのがわかる。いつもそんな風に寝る前に顔見てるのかな。え、恥ずかしいな。
そして、そんな風に洋平のことを考えたら…もう、だめだ。


明日は日曜日。週に1日だけ合う、2人が休みの日。
買い物にでも行こうって言ってたけど、これはもう我慢できません。


「・・・ようへい」
「どうした?」


ささやくように名前を呼ぶと、洋平は驚きもせずにささやき返してきた。


「眠い?」
「いや、そんなにだけど?」


暗闇で目が慣れている私は、そのまま洋平に抱きつく。
当たり前のように洋平も抱きしめ返してくれる。
洋平の匂いがまた一段と濃くなって、私は静かに深呼吸をした。


「ちゅーしていい?」
「もちろん」


その形のいい唇にゆっくりと自分の唇を押し当てる。
軽いキスは日常的にどちらからともなく交わしているけど、滅多に自分からはしないような深いキスを求めていく。


「ん・・・・・・?」
「んっ・・・はぁっ・・・」


いったん唇が離れても、またすぐに口付ける。
角度を変えてキスをしながら、私は洋平の下半身に手を伸ばした。
まだ完全ではなくても、通常時より質量を増した洋平自身をスウェット越しに感じる。


「っ・・どうしたよ」
「ちゃんと反応してくれるんだ」
「あたりまえだろ」


洋平がゆっくり私の上に覆い被さって、鼻と鼻が触れ合う距離で囁く。


「いつからそんなエロい子になったんだ?」
「洋平と一緒にいるからだよ」
「俺のせいかよ」


ははっと笑って、洋平の唇が私の首筋に降りてくる。


「ん・・・っ・・・ひゃっ!」


強く吸われて、思わず声が出る。


「やだ、見えちゃう」
「大丈夫だって」


パジャマがわりのロンTの裾をたくしあげて、洋平の手が脇腹や胸のあたりを這い回る。指が肌をかすめるたび、小さく声をあげてしまう。


「・・ぁっ・・・んっ・・」
「どうしてほしい?」
「やっ・・・わかんな、いっ」
「触って欲しいところ、言ってみな?」


手の動きをとめ、洋平が私を上から見つめる。
その顔は余裕さを保ちながらも、欲望が見え隠れして、胸の奥がぞわりとする。


「そんなの、言えないっ・・・!」
「ふーん?言えないようなところを触って欲しいんだな」
「ひぁっ!」


いつのまにか胸に添えられた洋平の親指と人差し指が、その頂をきゅっとつねりあげた。そのまま捏ね上げられれば、嬌声をあげるほかはない。


「あっ!・・んあっ、やっ!」
「・・・かわいい」


キスされながら今度は胸全体を揉みしだかれて、どんどんと高まっていくのがわかる。


、腰動いてる」
「っ!!」


さっきより少しだけ余裕さが減った洋平が、それでも嬉しそうに笑いながら私の腰を撫でる。
だって、なんか、今日はとまらない。


「・・・って?」
「ん?」
「こっちも・・・さわって?」


胸に置かれた洋平の手を握り、ゆっくりと下腹部に持っていく。
洋平が目を見開いて息をのむのがわかった。
今までこんなに積極的だったことがないから、驚きでいっぱいなんだろうけど、私だって、自分で自分がどうしようもなくて恥ずかしくて泣きそうだ。
もしかして引かれてしまったかもしれない。
思わず両腕で顔を覆うと、その腕を優しく取り払われる。


「顔、見せて」
「・・やっ!」
「なんで。 かわいい顔、見せろよ」
「・・・ひいてない?」
「なわけ」


かわいすぎてやべぇ、と耳元で洋平がささやいたと思ったら、そのまま耳をなめられた。


「んっ・・・!」
「ここ、触るな?」
「あっ・・んあっ、やぁあっ」


そのまま、下着を取り払われて洋平の指が中に入ってくる。
もう完全に濡れそぼったそこは、奥へ奥へと求めてしまう。


「あっ・・・んあっ・・・ぁあっ・・・!」
「・・・すげぇな、今日は」
「ひぁああっ!?」


外側の秘芯を不意に優しくこすられ、私はあられもない声をあげて達してしまう。


「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「大丈夫か?」
「・・・ん・・・」


洋平が枕元のカゴから避妊具をとりだし、装着している。
一回達したはずなのに、なんだかまだ疼いている自分の体が信じられない。


「もうちょっと、がんばってくれな」
「・・うん・・・洋平をちょうだい・・・」
「・・・おまえ、今日ヤベェって」


私の上に跨る洋平の首に腕を伸ばし、必死にしがみつく。
かたくなった洋平自身が蜜壺にあてがわれると、信じられないスムーズさで私の体内に飲み込まれていく。


「あっ・・・やっ・・・なに・・・!」
「っ・・・!?マジか・・・!?」


私が洋平を中に吸い込もうとするのに抗って、洋平が腰の律動を開始する。
ぐちゅぐちゅと卑猥な音が鼓膜を刺激し、頭の中がどんどん白く、何も考えられなくなっていく。


「あっ・・・!・・んあっ!・・やぁあっ・・・!!」
「・・・くっ・・・・・・っ!」
「んっ・・・あぁっ・・ようへ・・・いっ・・あぁんっ・・!」
「どうし、た・・・?」
「ふぁっ・・・きもちぃっ・・・すきぃ・・・っ」
「そりゃ、よかった・・・っ!」


突き上げられながら、必死に洋平の首に抱きつけば、洋平も強く抱きしめ返してくれる。それが嬉しくて、私はうわごとのように洋平の名前を呼び続ける。


「ようへ・・・っ・・・ようへいっ・・・・あっ・・・んあっ・・ようへ・・いっ・・・」
「あー・・・くそ、今日のの中、まじでやべぇ」


困ったように笑う洋平がいつもより汗をかいていて、その表情からさっきまでの余裕が微塵も感じられなくて、洋平も興奮してるんだ、気持ちいいんだって思ったら、お腹の奥がきゅんとした。それにより、洋平の質量をまた感じて、もうどうにかなってしまいそうになる。


「・・っ・・・、お前・・・締めんなよ・・・っ」
「あっ・・・んあぁあっ・・そんな・・・っ・・ぁあんっ・・!!!」


ぐっと最奥まであたるように腰をすすめられ、声にならない悲鳴をあげる。
そのまま口を塞がれるようにキスをされて、お互いの吐息が混ざり合う。


「あっ・・・んっ・・ふっ・・・」
・・・好きだ」
「・・っ!!・・んぁあっ・・・!」


「好きだ」のセリフを合図に、最後のスパートがかけられる。頭ごと抱きしめられて奥までガンガンに突き上げられたら、もう意味のある言葉を紡ぐこともできなくなる。


「あぁっ、んぁっ!ふぁああっ!!」
…っ!!」
「あ、あぁっ、んやぁああっ、も、だ・・め・・っ・・・!!」
「いいぞ、イけよ・・・っ」
「あっ、やっ、ひぁあっ、あ、ぁああっ!!」
「〜〜〜〜〜っ!!」


目の前がチカチカしたと思ったら、洋平の腰がガクガクと打ち付けられて、それにまた軽くイってしまう。
ぎゅっと強く抱きしめられ、ひとしきり体の震えがおさまったあと、静かに私は脱力した。







「すっきりした顔してんなぁ」
「な!?人を欲求不満みたいに言わないでよ!」


ふたりで向かい合いながらベッドに寝ていると、洋平がニヤニヤ笑いながら頭を撫でてきた。



、もうすぐ生理だろ?たまに生理前スゲェムラムラしてるときあるよな」
「えぇっ!?」
「全然寝付けなくてゴソゴソしてんの伝わってきたから、もしかしたら誘ってくるかなと思ったらビンゴだったな」
「う、うそ!?」


そういえば、そろそろ生理が来る頃かもしれない。
自分では全然意識してなかったけれど、そういうこともあるんだろうか。


「えっ、まっ、まさか毎月・・・!?」
「いや、毎月ではねぇけど、たまに」


この男、私以上に私の体のこと把握しすぎじゃないだろうか。優しい目をして私に腕枕をしながら、掛け布団の上からお腹の辺りをポンポンする。


「あんまり冷やすんじゃねーぞ。甘いモノも食べ過ぎんなよ」
「は、はい・・・」


ああでも、そういう男なのだ。水戸洋平という男は。
恥ずかしくって目を伏せると、おでこにキスが降ってきた。


「おやすみ」
「・・・・おやすみ」









眠れない夜の隣に