「ありがとうございましたー。」








がちゃん、と音をたててレジをしめて、軽く一息つく。
ふらりと目線をずらせば、商品管理をしてる水戸くんの横顔。

やっとレジ業務が一人前にこなせるようになってきた私が、バーコードとお友達になれるのはまだまだ先のことらしい。

日曜日の今日は、お昼から夕飯時までがっつりバイトに入っている。
それもこれも、全部水戸くんと少しでも一緒に仕事がしたいからなんだけど。

だけど、私を一人でもレジに入れると判断した店長によって、水戸くんは私の事実上の教育係から解任されて、店内を動き回る仕事を任されてしまった。
つまり、同じコンビニ内にはいても、一緒にカウンターにいることはできず。
それ要するに話がほとんどできないことを指す。


「(別に遊びに来てるわけじゃないんだけどさ。)」


おにぎりの箱と、手元のわけのわからない機械と目線を忙しく動かす水戸くん。
真剣な表情もかっこいいなぁ、と思ってぼんやり見ていたら、ばっちり目が合ってしまった。

ふっとほほ笑む水戸くんに、もう、声が出なくなる。

あわてて首を横に振って、うつむく。


常に余裕な水戸くんは、もう多分、いや、間違いなく私の気持ちに気づいてて。


私はあのポーカーフェイスのせいで水戸くんが何を考えてるのか全然わからなくて、私ばっかり焦ってしまう。




プラスにもマイナスにも決定的な言葉をくれない水戸くんは、いつもあの優しい笑顔を返してくれるだけなのだ。





「お疲れ様でしたー。」

「お疲れ様でーす。」



バックヤードに下がろうとすると、水戸くんも店長たちに挨拶をして、私があけた扉を支えてくれた。



「え?」
「え?」

思わず目を見開いて立ち止まった私に、水戸くんが何?という風にこっちを見る。そして優しく、私の背中を押した。


「水戸くんも今上がりなの?」
「そうだよ、俺、今日はちょっと早くあがらしてもらったんだ。」
「どうして?」
「どーしてって・・・」



制服の上着を脱いで、ロッカーから荷物を出す水戸くん。
私も、制服を脱いで軽く髪を直し、帰宅準備をする。




「水戸くんいないと夜、きつくない?」
「まぁ、でも、さんのシフトに合わせちゃったから。」
「は?」

相変わらず優しい表情の水戸くん。
それを見てどきどきと高鳴る私の鼓動。(ほんとに水戸くんばっかり余裕でずるい!!)



でも、これは、もしかして。





「一緒に帰りたいと思って。」
「・・・。」
「・・・話したいこともあるし。」
「・・・!」




今夜はきっと。





いい方向への決定的な言葉がもらえそう。





シフトチェックは不必要

「(ん・・・?店長からメモ・・・?
『せっかくさんと上がり同じにしてやったんだから頑張れよ!』
・・・・・・・・・・・バレてる・・・・・・!!)」