「だからね、こっちのレジがね・・・」
「はい、ごめんなさい。」








・・・・・はぁ〜あ。


店長がバックヤードに入ったのを見届けて、盛大に溜息。
コンビニってそんなにきつい仕事じゃないよって言われてやってみようと思ったけど、やっぱり接客業って大変。
ていうか何で私駅前のこんな人が来やすいコンビニ選んだんだろう。
地元の人が少ないとこにすればよかった。




さん。」
「・・・水戸くん。」


隣のレジに立っていた水戸くんが、少し困ったような顔でこっちを見ている。
店長に指導されて、あからさまに落ち込んでしまった私を気遣うような眼。


「あんまり落ち込まないでよ。」
「でも・・・」
「ちょっと夕方は忙しくなって、みんないらつくだけだから。」
「うん・・・」



同い年だけど、高校入学と同時にこのバイトを始めた水戸くんは、私より半年ほど先輩で。まだ一ヵ月にも満たない私にいろいろと丁寧に仕事を教えてくれる。



「実習生の名札がついてる間はやりたい放題なんだから、ミスしまくって仕事覚えればいいんだよ。」



水戸くんのちょっとぶっ飛んだセリフに、少しだけ笑顔になる。
いつも、こうして凹む私を元気づけてくれるのは水戸くん。



「水戸くんはどれくらいで仕事に慣れてきたの?」

「んー、俺は結構深夜もがっつり入ったり、夏休み中はほとんど毎日入ってたりしてたからな・・・」

「あー、それじゃぁ慣れるのも早いね。」

「でもさん頭好さそうだからすぐこんなの慣れるって。」




その時、少し強面の若い男性が商品を持ってやってきた。



「いらっしゃいませ。」



反射的にレジに立とうとする私より、一瞬だけ早く水戸くんが動いた。









・・・・・あぁ。



最近噂の、コンビニ荒らし。
強盗というわけじゃないけど、接客態度やスピードなどでいちゃもんをつける若い男性がいるから気をつけろ、って店長に言われてた。
特に、若い女性が店員だと危ない、って。







あの人がそうだという確信はなくても、まだ仕事も覚えてなくてのろのろしてる私では、もし万が一そうだった時に危ないから。
もし、本当にコンビニ荒らしの人だったら、って考えてくれたんだ。




水戸くんのこういう目立たない優しさに、どうしてもきゅんっとなる。
女の子はさりげない気遣いができる男の人に弱いって知ってるんだろうか。





「結構危ないと思ったんだよね。」




さっきのお客様が出て行ってしばらくして、水戸くんがつぶやく。



「え?」

「さっきのやつ。」

「コンビニ荒らし?」

「うん。 俺、そういう奴らと交流あるから、空気でわかる。」



朗らかにちょっと怖い事を水戸くんが言う。



まぁ、リーゼントだし、よく腕とかに傷があるの見えたことあるし、こないだ自宅謹慎くらったとか言ってシフト一日中入れてたし(あれ?謹慎は?)、まぁ言われてみれば納得かもしれない。
・・・・・私何でこんな水戸くんのこと気にしてるんだろう。シフトまでチェックしちゃって!!!




さん。」

「え、何?」

「来週のシフトって、変則なんだよね?」

「あ、うん、部活が休みだから、こっち入れてもらった・・・」

「いつもの週より多く会えるな。」

「え?う、うん。」

「・・・・・・安心しなよ。」

「何が?」

「シフト表、チェックしてんのさんだけじゃないから。」
「!!(ばれてた!?)」

























シフトという名の逢瀬

・・・来月はどれくらい一緒になれるんだろ?